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オーバーホールの行程紹介

オーバーホールの必要性

ご購入頂きました時計を最良の状態で末永くお使い頂く為には定期的なオーバーホールは不可欠なものとなります。
ムーブメントに使用している油は時計の使用頻度に関係なく年月の経過と共に徐々に酸化し、そのまま使用すると部品の摩耗の原因となります。また歯車などから出る金属粉は精度不良などが起きやすくなり、そのまま放置しますと故障の原因となります。
ムーブメント内部から出る金属粉や汚れを洗浄し、注油や精度調整等を行うオーバーホールは通常3年毎に1回程度行う事をお勧め致します。

弊社ではお預かり致しましたお客様の時計を世界最高水準のメンテナンス工房にて以下の手順にてオーバーホールさせて頂いております。

オーバーホールの行程

  • 1.時計の外装、駒数、精度、防水性などをチェックします
    • はじめにお客様からお預かりした時計の不具合箇所を外観(ガラスの欠損・ケースやブレスレット、革バンドの状態)、機能(リュウズやプッシュボタンの機能検査、時計の針回し具合のチェック、アラームの振動音、共振音の正否チェック、防水性の検査)、精度(ムーブメントのタイミング、テンプの振り角、片振り)などの検査をすべて行い、想定される不具合の原因をすべて考察します。
  • 2.時計の裏蓋を開けます
    • 時計の裏蓋を専用の工具を使用して慎重に開けます。
      アラーム機能を搭載したヴァルカンウォッチは裏蓋の内側に共振軸が取り付けられている為、蓋の位置が狂わないように裏蓋が非常に固く取り付けられています。その為、専用オープナーによる慎重な開閉作業が求められます。
  • 3.ムーブメントをケースから取り外します
    • ムーブメントの巻き芯(リュウズの芯棒)を固定しているネジを緩めてリュウズを拭き取り、ケースにムーブメントを直接固定している留めネジ2本を取り外して、針と文字盤がセットされたムーブメントをケースから取り出します。
  • 4.ムーブメントの分解作業を行います
    • その1

      ムーズメントから針と文字盤を取り出し、ゼンマイを解き、脱進機(テンプ・アンクル・ガンギ車)→輪列(二番車・三番車・四番車)→一受(各穴車・丸穴車・香箱(ゼンマイの入っている箱))と各種歯車のあがきの調整と汚れがひどい場合にはベンジンによる下洗いを行いながら、200個以上のパーツから構成されるムーブメントを丁寧に分解していきます。
      この時、摩耗が見受けられるパーツは研磨を施すか、もしくは交換します。

      その2

      分解用トレイに整然と並べられたムーブメントの各種パーツ類。
      分解後、調整を施されたパーツ類を洗浄用のバスケットに傷が付かないように材質ごとに分けて収納し、専用の洗浄機により超音波を使って丁寧に洗い上げて行きます。
  • 5.ムーブメント(パーツ)を洗浄します
    • その1

      洗浄用のバスケットに収められていたムーブメントのパーツ類を専用の洗浄機で超音波を掛けて丁寧に洗い上げていきます。
      その2

      洗浄機内では、一層目(専用洗浄機+超音波)→二層目(専用リンス液+高速回転洗浄)→三層目(専用仕上げ液+超音波)→乾燥(温風)という順番で15分から20分かけて洗い上げます。
  • 6.ムーブメント(パーツ)の組み立てを行います
    • 洗浄機で洗い上げられたムーブメントのパーツ類は残留磁気を帯びている可能性があるため、脱磁作業を行ってから組み立て作業に入ります。
  • 7.注油、およびタイミングの調整作業を行います
    • その1

      組み立て作業の順番はリュウズ周辺の注油作業から始まり、一受け(各穴車・丸穴車・香箱(ゼンマイの入っている箱))→輪列(二番車・三番車・四番車)→脱進機(ガンギ車・アンクル・テンプ)の順に各歯車類のあがき具合の確認を行いながら、慎重に組み立て作業と注油を行い、最後にテンプのひげゼンマイの調整に入ります。
      その2

      組み上げたムーブメントのゼンマイをいっぱいに巻き上げ、テンプの片振り、ならびにタイミングの調整を行い、5姿勢(文字盤上・下、リュウズ下、12時方向下、9時方向下)でも誤差が+20秒以内になるように調整します。
  • 8.防水テストを行います
    • タイミングの調整を行ったムーブメントに文字盤と針を取りつけ、ケース内部に組み込みます。
      その後で専用の試験器で防水テストを行います。
  • 9.ワインディングマシーンでランニングテストを行います
    • 防水検査が完了した時計を二週間ほどワインディングマシーンにかけて各姿勢でのタイミングの経過テスト(ランニングテスト)を行い、不具合が無いかどうか最終検査を行います。
      (不具合が発覚した場合は、再度調整を施し再びランニングテストを行います。)
  • 10.完成
    • ランニングテストを行った結果、経過が良好であった時計は、オーバーホール作業を行った技術者とは別の技術者の手により最終検査(外観、機能、精度)を行い、合格した時計のみ完成品としてお客様のお手元へ届けられます。全ての作業が完了するまでにはおよそ1ヶ月の期間と要します。